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ようこそ、修羅の道へ――フリーランスの厳しい現実または生存戦略について

"フリー"であることの代償

 

とある界隈では"フリーランス"という立場にある種の羨望があるようでして、実際に身を投じる方や将来の希望として考える方がいらっしゃるようです。私自身としては別にフリーランスになること自体に思うところはなく、基本的には「やってみればいいんじゃないですかねー」ぐらいにしか考えていないのが正直なところ。チャレンジする姿勢については悪くないどころか、むしろ高く評価するべきだと思います。

 

けれども、フリーランスというのは、それほどお気楽な生き方でもないんですよ。むしろ生き残っていくのが難しい"修羅の道"ではないかと。

 

私はたかだかフリーランス歴5年の若輩者ではありますが、前職・前々職でさまざまなフリーランスの方々とお仕事をさせていただきました。業界歴としては、今年で20年目です。ごく限られた観測範囲の話でありジャンルが変われば事情も変わるのかもしれませんが、長期間フリーランスとして活躍し続けている方はほんのひと握りです。多くの方が、フリーランスという生き方を辞めて、別の人生を歩んでいらっしゃいます。具体的には、以下のような感じ。

 

フリーランスを辞めたあとの進路

  • 企業に就職する(自分のいた界隈に関連する/しないを含めて)
  • 会社を立ち上げる
  • ほかの職種へジョブチェンジする(大学講師、資格を活かした職種など)
  • 消息不明

 

上記のなかでもっとも"ゴール"に近いのは、ジョブチェンジの道でしょうか。会社設立もゴールのように思えるかもしれませんが、実はより厳しい道のスタートでして、経営が立ち行かなくなって会社をたたむ方も少なくありません。フリーランス時代に培った知識やスキルを武器に、それなりの企業に潜り込めれば超ラッキーといったところでしょう。


ただし年齢を重ねるにつれて企業はプロジェクトの管理能力、つまり"人を動かす力"を求めてくるわけでして。フリーランスという立場はその能力を伸ばしづらいこともあり、一定の年齢を超えると就職が非常に難しくなります。たとえ就職したとしても、生え抜きの幹部候補と比べて待(以下、涙にむせびながら略)。

 

そんなわけでフリーランスの道を選ぶということは、目の前にある自分の可能性を広げるとともに、退路の選択肢を減らしているとも言えるのではないかと思うわけです。

 


稼ぐための道筋を自分で切り開く

 

ではフリーランスとして生き残るために、なにをしなければならないのでしょうか。その質問に対してはさまざまな意見があると思いますが、大きく考えると「収入が増えるシステムを自力で作り上げる」ことだと、私は考えています。

 

企業にいれば多少の差異はあれ、半ば自動的に収入は増えていきます。しかしフリーランスの場合は、だまっていても収入が増え続けることはまずありません。自分で考えて、工夫して、努力しなければ、収入は低いままです。会社員の場合でもある程度共通する部分はありますが、フリーランスの場合は日常的な業務に加えて生存戦略を練る必要があるという点でシンドイです。

 

たとえば、一番手っ取り早い(と思われている)ライター業について考えてみましょう。ライター業で平均的な収入を得るには、いったいどれだけの成果物を納品する必要があるのでしょうか。

 

国税庁が発表した「平成25年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は年間414万円(資料5ページ目を参照)とされています。

 

参考資料

 

もしフリーライターとして1本5000円の原稿を書くならば、年間828本納品する必要がありますね(便宜上、源泉徴収や諸経費は考慮していません)。365日休みなく働いたとすると、毎日2.2本以上書かなければなりません。原稿の執筆には取材や検証、調査などが必要になりますが、その作業時間も含めての話です。どうでしょうか、やれそうですかね。

 

ちなみにフリーランスは保険料や年金などを全額払う必要がありますから、現実的にはもっと収入を得なければなりません。確定申告で経費が~というのは、また別の話。

 

さらにもっと言うと有給なんて素晴らしい仕組みは一切なく、体調不良で仕事ができない、あるいはなんらかのトラブルで手が止まると、そのぶんの収入は減っていきます。

 

そんな事態を防ぐには、常に体調管理や機材のメンテナンス等を意識する必要があります。また支出や収入を管理したり請求書を発行したり、スケジュール管理も自分で行なわなければなりません。このように、フリーランスは総務/経理/システム管理の仕事に加えて、自己管理まで行なう必要があるのです。うわー、メンドクセー。

 

そう考えると、1本5000円のお仕事なんて、到底やってられません。1日に10本納品できるスキルを身に付ければ別ですが、普通は仕事の単価を上げる必要に迫られます。では単価はどうやって上げるべきなのでしょうか? そんなこと私が教えて欲しいくらいなのですが、私のつたない経験からなんとかひねり出せたのは以下の4項目です。なお、私自身が実現できているとは限りません。

 

仕事の単価を上げる方法

  • 専門的な知識やスキルを身につけて、自分にしかできない(あるいはできる人が少ない)成果物を仕上げる
  • 積極的に営業を行ない、条件のいい案件に出会えるチャンスを広げる
  • 担当者周辺の人物とも積極的にコミュニケーションを取る
  • 報酬以外のメリットを考え、中長期的な視点で判断する

 

個別の項目について解説すると全体のボリュームが書籍1冊ぶんくらいになりそうなので、今回はあえて説明しません。ここから自分なりの気づきを得られれば、フリーランスとして生き残る可能性は上がるでしょう。決して、メンドーになったから説明しないというワケではありませんよ。ホントですよ?

 

それはともかく、この単価を上げる方法は一時的にこなせばいいわけではなく、フリーランスとして生きていく限り継続する必要があると私は思っています。別に全部でなくてもいいのですが、最低でも2つは常に意識しておく必要があるかなと。4つ全部できる人なら、もしかすると大成するかもしれませんよ。

 

以上は単価を上げる方法についてですが、収入を増やすシステムには別の方法もあります。たとえば外注を利用するですとか、別の職種にも進出してみるですとか、知名度を上げて優位な立場に立つですとか、手段はいろいろです。すでにノウハウを持っている人からやり方を聞き出すのが効率的ですが、最終的には自分の頭で考え自分の手を動かす必要があります。

 

しかし、これらを一定のテンションを維持し続けたまま継続していくのは相当ツライんですよね。30台半ばを過ぎると体力も衰えてきがちですし、40台になると若い人でもなりがちなスマホ老眼が進んだりしますし(決してただの老眼ではありません!)。体力的にも精神的にもタフ(あるいは鈍感とも言う)でなければ厳しいものがあります。

 

フリーランスに必要なものは会社で身に付けられる

 

じゃあフリーランスとして生きていくのは超人でなければムリなのかというと、実はそうでもありません。独立前にコネとある程度の知識/スキルを身につけておけば、比較的こなしていけます。で、それらを効率的に身につけるには、結局のところ会社に勤めるのがよかったりもするんですよね。

 

また会社である程度の経験を積むとそれなりの責任を持つことになり、その結果として管理能力が培われていきます。これはフリーランスでは得難い、貴重な経験です。プロジェクトの進行がうまく行かなかったとしても、「多くの人は効率や成果ではなく、感情で動いている」などの気づきを得られることもあるでしょう。

 

もしいま会社勤めをしている人でフリーランスへの転向を考えているなら、いまの職場で可能な限り下地作りをしておくことをおすすめします。やりたいことと関係がないように思えても、この先なにが起こるかはわかりませんよ?

 

フリーランスがこの先生きのこるには?

 

しかし会社でコネやスキルを得たしても、フリーランスで生きていくのは修羅の道です。ノースキルならなおのこと。業界のルールや経験がないとわからないことだらけで、時にはヘコむこともあるでしょう。会社員なら先輩や上司が教えてくれるかもしれませんが、フリーランスは自力で身に付ける必要があります。

 

でもだからといって、別にフリーランスなんてやめとけというわけではありません。フリーランスという立場で得られにくいものを意識しておくと、後々に役立つのではないか、ということです。特に若さは体力面や印象面など、いろんな意味で大きな武器となります。大切なのは、自分の強みを意識して今後どう生き残るかを考えることです。

 

世界は5~10年で大きく変わることもあります。初代iPhoneが発表されたのは2007年1月で、日本でiPhone3Gが発売されたのは2008年7月のこと。まだ10年たっていませんが、モバイル/PC市場は劇変しました。この変化によって新たに生み出されたものも数多く存在しますが、消えたものも多くあります。

 

このように、いまは順調でも短期間で不調に転じることがあるかもしれません。たとえば私は、出版/メディア業界で写植→DTPへの変化や紙媒体→ウェブ媒体の変化に乗り遅れフェードアウトしていった事例を見てきました。また依頼主に変化があると、真っ先に切られるのは外注です。そんな情勢を乗り切るためにも、フリーランスは自らを守る手段を身に付けなければなりません。"自営業"ではなく、"自衛業"です。あ、フリーランスって"自由業"でしたね。ウマイこと言えたつもりだったのに……。

 

そんなわけで、私が言いたいことはただひとつ。

 

「厳しいけど、みんなで生き残ろうぜ!」